昭和大学医学部および中央大学理工学部との共同研究の研究成果が神経学・神経心理学の専門誌(Neurocase誌)の電子版に掲載されました。
- 掲載誌:Neurocase. 2015 Dec 8:1-5.
- 論文タイトル:Wandering behavior of a severely demented patient with frontotemporal dementia.
- 著者:Midorikawa A, Suzuki H, Hiromitsu K, Kawamura M.
本研究は、認知症の中でも脳の前方(前頭葉や側頭葉)を中心に病気が進行する前頭側頭型認知症の方を対象としたものです。一般的に、認知症になると徘徊(方向感覚や記憶障害により道に迷う)や周徊(同じ道を行ったり来たりする)が生じることが知られていますが、アルツハイマー病とは異なり、前頭側頭型認知症では徘徊よりも周徊が生じやすく、方向感覚は比較的保たれていると考えられています。一方で、前頭側頭型認知症でも、病状が進行した状態では外出が困難であったり、制限されていたりするために、移動する能力についてどのくらい残されているのか明らかではありませんでした。そのような中、我々の研究チームは、旦那さんの協力を得て、重度に病状が進行した状態でも患者さんご自身が主体的に行っていた散歩の記録を利用して、経路の解析を行ったところ、いわゆる徘徊や周徊に該当せず、常に新しいルートを選択して移動することが明らかになったばかりか、一見するとランダムに見える経路選択も、一定のルールに則っていることが明らかとなりました。脳の前方の機能が著しく低下した状態であっても、脳の後方が残されている限り、移動することが可能であることを明らかにすることができました。